黒檀ヘラ

(上から)加工前→粗削り→仕上げ磨き

革制作の番外編で、道具を自作しました。

縫い目や継ぎ目が外側から見えなくなる「内縫い」に仕上げる時、まず裏返しに組み立てておき、少しずつぐいぐいと押し込みながらひっくり返していきます。

厚みのある革は硬く、布のように簡単に裏返すことができません。素手だけではきれいに成形するのが難しく、そこで無くてはならない道具がこのヘラです。

いつもお世話になっている鞄屋さんでは、イタリアで購入された水牛の角でつくられたヘラを使用されていましたが、一般にはなかなか手に入りにくいようでした。

最初はプラスチックのヘラを使ってみましたが、柔らかかったり硬すぎたり、いまいち手にも馴染まず……そこで、いつもの癖で自作することにしました(^_^;)

材料の検討

革を裏返す時にはけっこうな力をかけて押し込むので、強度があり、なおかつ加工しやすいものが理想です。

東急ハンズの木材売り場で箸などを作る材料をたくさん売っていて、いろいろと見た中では、黒檀なら硬さもあり良いのではと思いました。

何しろ格好いいので、使ってみたい素材でした。

成形

写真の一番上が加工前、真ん中が粗削り、一番下が完成形です。長さ20cmの黒檀の平たい板材を、まずはヘラに丁度良い長さ15cmに鋸で切断し、ベニヤを切るような大きめの刃の厚いカッターナイフで粗く成形します。

革を押し込む先端側(写真左側)は小さな入隅にも入るようやや鋭角に、反対側は手のひらに当てて押し込むため半円くらいの形にしました。

硬さはあるものの、繊維に沿って鉛筆を削る要領で刃を当てれば、意外と削りやすいのは驚きました(とはいえヒノキなどよりはるかに硬いので、手は痛くなります……)。

ただし、繊維の柔らかい所に入ってしまうと刃が深く入りすぎて裂けてしまうので注意が必要です。最初の1本はそれでダメにしてしまいました。流線形のイメージで、少しずつ慎重に削っていきます。

研磨と仕上げ

ある程度削り終えたら紙ヤスリで整えます。最初は240番から始めて、次は360番と徐々に目の細かいヤスリにかえて磨いていきます。最終的には600番で整えました。

最後に、革のメンテナンスで使う蜜蝋ワックス(ラナパー)を刷り込んで、ポリッシングクロスで磨いて完成です。木目の縞模様が虎目石のように鮮やかに現れます。

手間と時間はかかりますが、自作の道具を使うと手に馴染みも良く、気持ちも上がります。


黒檀ヘラ

W150mm×D20mm×t=5mm

黒檀板材、蜜蝋ワックス