泊まった部屋の実測(6)

倉敷国際ホテル

倉敷に多くの優れた建築物を遺した岡山出身の建築家、浦辺鎮太郎の設計によるホテルです。

倉敷には縁あって何度か訪れたことがあり、同じ設計者による倉敷アイビースクエアには何度かお世話になりましたが、こちらは初の宿泊でした。

部屋のスパン(横幅)はゆったりとしていて、ほぼ8畳間くらいの室形です。今回も設計する上で大切な芯々寸法を壁厚から推定して書いています。

2枚目は、窓まわりの断面と、壁〜天井の納まりのスケッチです。窓まわりの壁は145mmと深めの抱き(奥行き)のある納まりで、外観からサッシの存在が目立たないようになっています。

窓の下枠に合わせて外壁に一列、慎ましやかに平瓦が張られており、一枚ごとに少しずつ焼色の異なる風合いにも手仕事の温かみを感じます。

天井は吹付仕上ですが、窓に達する梁下まで吹付が回り込み、梁型を単なる出っ張りではなく天井と一体的な下り壁として見せる工夫がなされており、しかも天井と壁の境は半径70mmの曲面で面取りされています。コーナーを塗り込めた床の間「室床」のような柔らかい印象があります。

興味深いと思ったのは、四周にこれをやると野暮ったくなりそうな所ですが、ベッド側の壁はクロスが天井まで達し、吹付との境界は透かし目地を切って納めており、絶妙に抑制が効いたデザインになっている点です。

この天井をきれいに見せるためと思いますが、照明器具も吊られたペンダントライト1灯のみで、スプリンクラーも天井ではなく壁付になっています。

細部の納まりまできめ細かく、とても居心地の良い部屋でした。デザインのプロポーションも安定感があり、おそらく正方形を基本に考えられているような印象を受けました。


size:A6 文庫ノート 鉛筆、色鉛筆

ホテルに備え付けの用紙 鉛筆