ギボシ長財布

内縫い風の長財布

黒檀ヘラを作ったことで内縫い風の作り方ができるようになり、表現の幅が少し広がりました。名刺入れやカードケースなど、いろいろと挑戦してみましたが、一番やりたかったのがこの長財布です。

フラップを留めている極小のギボシがアクセントですが、このギボシは数年後にバネホックへ交換することになります。その理由は後ほど。

側面です。内縫い風に仕上げていますが、この長財布もまだ手縫いができなかった頃の作品なので、カシメで留めて、黒檀ヘラでぐいぐいと押し込みながら仕上げています。

押し込む時にかなりの張力がかかるので、特に厚みのある革は、気をつけないと銀面(表面)に亀裂が生じてしまいます。折り目となるあたりの床面を少し漉いて薄くしておけば回避しやすいようです。

内部

フラップを開けてみたところです。横幅は日本円のお札が入るギリギリの外寸およそ170mmで、カード類は横向きでは並ばないので、縦に2列収納しています。

横幅を一般的な長財布よりもミニマムに抑えたのは、普段良く使うズボンの前ポケットに入れやすくしたかったためです。

小銭用とレシート類用に仕切りを入れていますが、横長のため、小銭を入れるならファスナーか折り返しの内蓋が欲しいところでした。自分で使う際は、カード類が多いので小銭は別のミニ財布に分けています(^_^;)

内部の組立て

中仕切りがあるので、ちょっとアクロバットな留め方をしています。内部には厚さ1.0mmの薄い革の仕切りが4枚ありますが、全てを本体に直接留めるにはカシメの長さが足りません。

そこで、まず中仕切り4枚小カシメで留めて袋状に組み立てておきます。中仕切りは内部に隠れるので、内縫い風ではなくカシメは露出しています。

次に本体を、上部2箇所だけ留めずに組み立ててひっくり返してヘラで成形し、最後に中仕切りをセットして、上部2箇所を大カシメ(長足)で本体に打ち込んで中仕切りと一緒に留めます。2mm×2枚+1mm×2枚、トータル6mmが長足で留められるギリギリの厚みでした。

中仕切りの下部は内部で本体の折り返しに引っ掛けてあるだけですが、充分機能を果たします。もう少しうまい留め方があるのではと思いますが、試作としてはまずまずかと思います。

背面は至ってシンプルです。中仕切りを内部の折り返しに留めているだけなので、外観にはカシメが現れません。

ギボシを交換

5年ほど使っていますが、カシメで留めた所に構造的な欠陥はありません。ただ、使い方によっては小さいギボシがちょっと問題でした……

鞄の中に入れておく分にはさほど問題はありませんが、ズボンの前ポケットに入れて使っていたところ、ギボシがズボン生地の同じ場所にピンポイントで当たり続け、生地が擦れて薄くなってしまいました。そこで大きめのバネホックに交換したところ、生地の擦り減りは無くなりました。

しかしながら極小のギボシは可愛らしいパーツなので、そうした影響のない用途でまた使いたいと思っています。


ギボシ長財布(2019.02)

W170mm×D20mm×H100mm

イタリアンレザー(ミッスーリ)t=2.0mm,1.0mm、大カシメ(長足)・小カシメ、極小ギボシ(真鍮)