プレゼント用に制作した口枠鞄のサイズ感がとても良かったので、普段使い用に同じくらいのサイズでもう一つ作ることにしました。
本体の素材は前2作と同じアラスカのアイボリー色です。持ち手などツートンカラーの所はミッスーリのチョコ色が無くなってしまったので、少し赤茶系のマローネ色を使用しました。
作り方は内縫い口枠鞄(2)とほぼ同じですが、書類に限らずかさばる物を多く持ち歩くことと、個人的にはカッチリと四角いブリーフケースのようなダレスバッグよりも、お医者さんが持ち歩くドクターズバッグのようなぽてっとした下膨れの形が好きなので、横幅は変えずに底マチを前回より20mm広げて150mmとしました。口枠も前回より50mm短い350mmにして、全体のプロポーションを変えてみました。
今回はリュックとしても使うことを想定して、持ち手の四角カンにナスカンを引っ掛けるため、四角カンにある程度の隙間=高さが必要でした。いろいろ探した結果、浅草橋の「エムアンドケイ ヨコヤ」さんの幅18mm×高さ21mmを使用しています。こちらのお店は鞄の錠前も目移りするほど豊富にあり、いつもお世話になっています。
お店でいろいろな金具に目移りした結果、今回初めて留め具に錠前を使ってみることにしました。取付けが少し難しそうでしたが、やってみたさに負けて真鍮製の錠前を購入しました。真鍮製は鉄製金メッキ仕上に較べて値段もなかなか高価でしたが、長く使うならメッキは避けたいと思いました。
また、肩掛け用の金具も今回はDカンではなく「への字カン」を使ってみました。格好いい金具ですが、結果から言うとリュックが便利すぎたので、肩掛けで使ったことはほぼありません^^;
また、への字カンは皿ビスで固定するため、長く使うとビスが緩んでくる可能性が考えられます。構造上、ビスを口枠の巻き革で包んでしまうため、緩んだら切開して巻き革から作り直さなければなりません。
さらに大変なのは皿ビスに合わせたアルミの芯材への加工でした。真っ直ぐに穴あけした後、さらに板厚の半分ほどを円錐型に広げなければなりません。歯医者さんみたいな電動工具があれば良いのですが、無かったので手でひたすらゴリゴリとヤスリ掛けしました。
素手では二度とやりたくありません…(^_^;)
口枠と本体を合わせるところまでは前作と同じ工程です。ここにどうやって錠前を取り付けるか。デザイン的にも顔になるところなので、悩みどころでした。
錠前は鍵の機構がついている分、背面に四角く出っ張った部分があり、単純に取り付けると本体から浮いてしまいます。本体に四角い穴を空ければ収まりそうですが、そうすると今度は錠前を固定するためのツメを刺すことができません。
そこで2.7mmの革を一枚挟んで厚みの調整をします。単純に一枚かませるだけだと何となくしっくりこなかったので、マローネ色のミッスーリを一回り大きく切り出して下部にベロをつけました。錠前を開ける時に指を掛けられるので、開けやすいです。
側面です。底マチを広めにとっているので大容量です。普段の荷物に加えてワインボトル一本くらい入るので、買い物にも重宝します。ただ、厚手の革を使っているので、自重が重たいのが多少難点です。
口枠を開けたところです。今回も内外にひとつずつポケットを付けましたが、その他は仕切らないワンルームタイプです。中仕切を入れないのでフレキシビリティが高く、1泊分の着替えも入ります。
口枠350mmはA4ファイルがギリギリ入るサイズ感です。使ってみるとかなりキチキチなので、書類をたくさん入れるなら400mmの方が良いと思います。サイズにもよりますが、ノートパソコンは入りませんでした。
背面です。革はシボと呼ばれる模様が均一に入っています。シボ感が強い方が好みなのでこちらを表面にしようかと考えていましたが、切り出す時に前後を間違えてしまいました。口枠をかぶせる関係で背面の方が一回り大きいため、前後の入れ替えは効きません。
持ち手の四角カンと、下のDカンにナスカン付きのストラップを装着してリュックにできます。
ストラップを2本取付けてリュックにしたところです。
こちらはストラップ1本で肩掛けにしたところです。表面の革はシボが少なめで、トラと呼ばれる模様が縦に走っています。シボの多い部分よりもしっかりとハリがあるので、結果的にこちらを表にして良かったと思います。
内縫い口枠鞄(3) (2021.05)
W390mm×D150mm×H250mm(持ち手含まず)
イタリアンレザー(アラスカ)t=2.2mm,1.4mm、ミッスーリ(3.5mm,2.7mm)、錠前(真鍮製,クリア仕上)・バネホック(No.1)・特大カシメ(13mm足)・四角カン21×18mm・DカンNo.211-24mm・への字カン・ナスカンNo.310-24mm・尾錠・底鋲KA-404-12(ネジ10mm)(真鍮)、中ポンネジ(本金メッキ)、口枠W350×t3mm(アルミ)、蝋引き糸
おまけ
制作記録のメモです。口枠の幅よりも底面を広くする場合は、型紙は(2)の場合とは逆に下底が大きな台形になります。