真鶴百景(72)

さちこさんの庭

正確に言うなら 実はこの風景は もう存在しません

今から17年前の大学生の頃 真鶴の港町研究で初めて真鶴を訪れた時 玄関先のベンチに座っていたおばあさんに声をかけていただき 長いことすっかり話し込みました

もう居ないおじいさんの釣り道具や たくさんの植木に囲まれて それは豊かな 玄関先のちいさな庭でした

ひとりで暮らしていても 道行く人と話ができるから 寂しくないと話してくれました

今は植木も釣り道具もベンチも無く 建物だけが 静かに残っています

向かいの大きな旅館 大正庵も 現在は営業しておらず 既に看板もありません

建物部分は今年現地でペン描きし 当時描いた鉛筆スケッチをもとに描き加えて再現してみました

物は時のなかで静かに朽ちていく それでも 心に残しておきたい 大切な風景です


size:A4 画用紙 油性ペン・水彩

おまけ

大学生の頃 港町研究で最初に真鶴を訪れた年に描いた鉛筆スケッチです 描いている間も にこやかに待っていてくださいました