きっかけ
革を使って最初に何かを作ろうと考えたのは、今から6年前、2018年の冬のことでした。
建築設計という仕事柄コンベックス(巻尺)をよく使うのですが、どこかに置き忘れたり、鞄に入れっぱなしにしたり、必要な時にとにかくよく忘れるので、腰に付ける小さいポシェットのようなものが欲しいな…と思ったのが、そもそもの始まりでした。
大学時代、製図の先生が腰につけていたのを思い出し、調べてみると「ベルトポーチ」という名前でした。最初は既製品をいろいろと探してみたところ、結構がっしりと無骨なデザインのものが多く、ちょっとハードだなと思って一旦は諦めかけました。
ところが、何日か過ぎても諦め切れず、簡単なスケッチを描いて革鞄の工房を訪ね、オーダーメイドで作れないかと聞いてみました。
残念ながら、出来なくはないけれどオーダーするとコストがかかりすぎるのでおすすめできない…とのことで、それならひとつやってみようかと、その足で東急ハンズに寄ってA4サイズのヌメ革を一枚買って帰りました。
縫えない?
初めて革を買って、触ってみて、硬さはどれくらいか、どんなふうに曲がるのかなど、少しずつその物性が解ってきましたが、手縫いで縫い合わせていくのは、針が2本? とか、交互に縫う? など、全くの初心者には何となくハードルが高そうでした…
スタディ模型
そこで、まず接合方法は一旦置いておき、型紙をおこして形のスタディをしてみました。建築の設計と同じように、2次元のスケッチを基に模型を作って3次元化を試みました。
試行錯誤ののち、縫い代をとりあえずホチキスで留め、何となく形が見えてきました。
私は丸みをおびたコロンとした形が好きなのですが、画用紙の模型ではエッジが立ってしまいます。革を曲げながら、実際はもっとエッジが丸く仕上がるだろうなと予想しつつ…
型紙づくり
先日の革鞄の工房でカシメという金具があることを知り、縫わないレザークラフトでやってみようと思いました。
模型ではホチキスで留めていた所をカシメに置き換えて図面化しました。上の図面の小さな丸穴の所にカシメを通して打ち付けます。穴の位置は、型紙を切り抜いては微調整を重ねました。
ヌメ革で挑戦
型紙が決まり、カシメや打ち付ける道具(木槌・打ち棒・打ち台・下敷きのゴム板)を揃えたら、いよいよヌメ革を裁断します。
最初にカッターを刺した時の感触は忘れられず、弾力や抵抗感が何とも生き物らしいというか…当然ながら紙とは大違いですね。
カシメを打ち付けて、先ほどまで平面だった革が立体になりました。予想通りコーナーはむっくりと丸みがあり、柔らかい雰囲気がなかなか良い感じです。
完成した側面です。カシメを2本打って固定しました。細かいものを入れるわけではないので十分と思い2箇所留めにしましたが、革自身の弾力もあり、重なりは思いのほか隙間も小さく仕上がりました。
背面です。ベルトに通して留めるためのジャンパーホックを付けました。
最初なのでコバの処理やカッティングの曲線は甘いですが、私にとっては大きな一歩でした。
試作ベルトポーチ(2018.02)
W100mm×D45mm×H90mm
ヌメ革(栃木レザー2.5mm)、大カシメ・ジャンパーホック7070(アンティーク仕上)