縫わない革制作の5作目、鞄としては1作目です。
本体はベルトポーチ、フラップはシステム手帳の作り方の応用でできています。今回は留め具に初めてドイツホックを使用してみました。
試作
小さめのショルダーバッグですが、それまでは小物の制作のみでしたので、まずはヌメ革で試作して、形状や寸法感などを確認していきました。
上の写真の試作ではフラップの切れ込みを強くしすぎたので形状を見直し、試作には無かった内ポケットも付けてみることにしました。
本制作
図面や型紙を起こして形状を検討しながら完成したものがこちらです。
革は、革鞄工房さんから分けていただいたデッドストックです。名も無きタンナーさんに特注で作ってもらった革とのことで、最初は良かったものの次の発注では振れ幅が大きく、採用できなかったそうです。
これは良かった方の革で、作りたては浅い色でマットな質感ですが、使い込むとどんどん色が濃くなり、艶も増してきます。
フラップには、システム手帳の時に考えた、角を摘んでカシメを打つ方法で立体感を出し、この厚みの中に内ポケットが納まる設計になっています。
真横から見たところです。側面にステッチを入れられれば良いのですが、この時は手縫いができなかったのでカシメを打っただけです。重なりを大きくしているので、数年使っていますが隙間から物が落ちたことは今のところありません。
ベルト幅は20mm。尾錠は柳場美錠さんの290-20、Dカンは角田商店さんのNo.211の21mm、ナスカンはNo.312の同じく21mmを使用しています。このナスカンもいろいろ探した結果、サイズが小さく形も可愛らしいのでよく使っています。
フラップを開けたところ。本体は500mlペットボトルが横にすれば入るサイズ感です。
内ポケットはフラップと同じやり方で立体感を出し、広めのマチをつくっています。新書本が入ります。三方を内側に折り込んで本体にカシメ打ちしました。
床面(裏地)は材料そのままです。長く使うとどうしても薄い裏地から傷んでくることが多く、過去に気に入った鞄をいくつかそれでダメにしてしまったことがありました。床面を現しにするやり方はシンプルで良いと思います。
この革はおそらく床面に加工してあるようなので問題ありませんが、もし毛羽立ってきたらトコノールを塗るなど、自分でメンテナンスできるのも床面現し仕上の良い所です。
吊り下げたところ。
背面は至ってシンプルです。一枚革で出来ているので継ぎ目がありません。
ナチュラルレザーは均質な素材ではなく、それが良さなのですが、生きていた時にできたバラ傷の大きいものや、時には穴の空いた部分もあるので、一枚革で切り出すのは実はなかなか難しいです。
どうしてもバラ傷が入ってしまう時は、目立たない所にもって来られるか部品取りを検討します。
無駄なく、うまく切り出せた時は祝杯をあげたくなります。
カシメショルダー(1) (2018.07)
W290mm×D70mm×H190mm
イタリアンレザー(名称不明,t=2mm)、ドイツホック(真鍮製,メッキ仕上)・大カシメ・小カシメ・DカンNo.211-21mm・ナスカンNo.312-21mm・尾錠290-20(真鍮)