流店

岡山、後楽園の真ん中あたりに「流店」という名前の、とても個性的な建物があります。

雨戸の戸袋以外は壁が一切なく、細い柱だけで屋根と2階を支えています。ファサードを見ると、1階はピロティ、2階はマッス(ボリューム)として感じます。

建物の中に庭園の水の流れを引き込み、それが内部の床面を真っ二つに割っているという、大胆な構想に驚きます。

加えて、建物の片方は中洲に建っており、中に入ると建物の中と外の両方に水の流れを見ることができます。

板張りの床に座ると、流れの向こうに広々とした芝生の庭を見渡せます。水の流れや吹き抜ける風と相まって、とても心地よく、清々しい気持になります。

同じレベルの高さでぐるりと回っている垂壁と、足元140mmの敷居の存在は、この空間にとって、おそらくとても重要です。

単純に考えると無い方が開放的のようですが、この垂壁と敷居が額縁のように風景をパノラミックに切取り、目線を芝の水平線と水の流れへと誘導します。

この上なく開放的でありながら、室内の領域を明瞭に、幾何学的な直線で規定しており、そこに座ると、ここは人間の居場所であるという感じを覚えます。

まるで鉄骨造の建物のように細い柱や、その上に浮遊する2階のボリュームと併せて、非常に近代的でシャープな感覚があります。とても好きな建築物のひとつです。


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